2012/02/26

ゴルフと手術

  この度、ゴルフ部の顧問を仰せつかりました産婦人科の池田智明です。高校時代は陸上部、大学時代は野球部に所属しましたので、ゴルフは部活として行ったことがありません。しかし、今、最も上達したいスポーツはゴルフですので、ゴルフ部の顧問になることができ、皆さんとコンペで一緒にプレーできることを大変喜んでいます。といいますのは、三重大学産婦人科教室の同門会にはゴルフの上手な先生がたくさんおられ、コンペでも90台ではまず優勝できないぐらいレベルが高いのです。一度は、同門会ゴルフ大会で優勝してみたいと思っており、ゴルフ部の皆さんと一緒に練習して、上手くなろうと考えています。
  さて、産婦人科は外科系であり、手術療法は重要な治療手段です。日々、手術をしていて、この手術とゴルフは極めて似ていると感じており、以下に共通点を述べます。
(1) まず、手術をする臓器の解剖が理解されていることが大切ですが、ゴルフでもコース設定がしっかり頭に入っていることが必要です。思わぬ、バンカーやOBが待ち受けていますが、手術中にも出血しやすい小さな血管などが待ち受けており、あらかじめ準備しておくことが大事です。
(2) 上手になるためには、まず良い指導者につくこと、解説書などをしっかり読むこと、ビデオなどで視覚的に学習すること、そして実際に練習・実戦を続けることが重要です。これは、手術、ゴルフ以外にも当てはまることですね。また、これで終わりということがなく、一生学ばなければなりません。私は、自分用の腹腔鏡下手術のシミュレーション装置を自室に置いて、日々トレーニングをしています。ゴルフに関しても、自分の部屋にパター練習装置を持ち込みたいのですが、人目もあり、実現していません。
(3) また、使用する道具も、常日頃から、最新の情報をアップデートして、自分に合うものを求める努力が必要です。最近の手術用具も、超音波凝固切離装置や癒着防止シートなど、次々に新しいものが出てきています。ゴルフ用具もクラブ、ボールのみでなく、練習器具など周辺機器の進歩が著しく、良い道具を求めることに貪欲になるべきと思います。
(4) さらに、苦境やピンチに陥ったときに、どのように対処するかで真価が問われます。手術もゴルフも順調な時にはいいのですが、どこから出ているのかわからない出血など通常から逸脱した時、ボールが林やラフに入ったとき、最小限の出血で済ますか、大きくスコアを崩さないかは、まさに、その人の実力です。じっと我慢しなければならない時もあり、カーとなって怒ったりするのは最低です。
(5) 最後に、良い人間関係を作ることは極めて重要です。手術も単独で行うことよりも複数ですることの方が多いです。ゴルフは個人競技というものの、一人でラウンドすることは稀でしょう。気持ち良いメンバーやキャディーさん当たると5打ぐらいは良くなります。手術でも上手な助手やスムーズな機械出しの看護師さんにあたると、より順調な経過となるでしょう。しかし、気持ちよいメンバーも上手な看護師さんも、案外こちらの気遣い次第でそうなることも多いものです。
  以上のように、手術とゴルフは多くの共通点を持っています。したがって、ゴルフを本気で打ち込むことは、手術がうまくなり、良い医師になる道に繋がると信じています。外科系の医師にゴルフ好きが多いのも納得といったところでしょうか。ただ、「先生の手術のハンディキャップはいくつなのですか?」と疑われないように、本業の方も精進したいと思っています。どうか、今後ともよろしくお願いいたします。