2013/02/26

10000時間の法則

  オレゴン州、ポートランドに住む、ダン・マクローリン(Dan McLaughlin)は、30歳まで、ゴルフを18ホール回ったこともない、平凡な写真家でした。彼は、2010年4月に写真の職業をやめ、週に30時間余りゴルフの練習を送る生活をし、2016年10月までにPGAツアーに参加するという目標をたてています。これは、「ダン・プラン」と呼ばれるもので、彼のコーチや理学療法士などと組んで、「10000時間の法則」が本当かどうか実証しようというものです。
   「10000時間の法則」というのは、フロリダ州立大学の心理学教授であるアンダース・エリクソン教授(Anders Ericsson,)が提唱したもので、どんな分野でも天才とよばれる抜きんでた者は、10000時間の練習や下積みがあるという理論です。たとえば、ベルリンの音楽アカデミーでは、小さいころから毎週の練習時間を記録することを課していますが、世界的に有名なプロバイオリニストは、20歳までに平均10000時間の練習をこなすそうです。一方、音楽の先生になるレベルのバイオリニストは平均4000時間、その中間のオーケストラのバイオリニストは平均8000時間であったと述べています。この練習時間は、先生から指導を受けて、よく考えながらの練習“deliberate practice”に限りますが、練習時間の多さが、プロになるには必要であると強調しています。彼の説は、ビートルズがイギリスで有名になる前にハンブルグのクラブで約10000時間、演奏したことや、ビル・ゲーツがコンピュータプログラミングを10000時間費やした後に、ブレイクしたことなどから、「10000時間の法則」と呼ばれるようになっています。しかし、プロフェッショナルと呼ばれる高さまでその技術、技能を高めるためには、その人がもつ才能や体格、そして始める年齢なども重要であることは、誰もが認めるところでしょう。才能か努力か?という問いに答えるために、「ダン・プラン」は立ち上がり、アメリカ人としては体格が劣る30歳という、ごく普通のダン・マクローリンのチャレンジは、寄付金を集めながら続けられており、3分の1の時間が過ぎた今、ハンディキャップ6までになっています。ゴルフ部のみなさんは、現在までに何時間ゴルフに費やしてきましたか?私はとても、10000時間とはいきません。
  日本の医学部で、医学生は、専門の講義と実習を6年間にわたって10000時間おこないます。5年間で1日5.4時間医学を学びます。卒後、初期研修として2年間で10000時間医療に携わります。1日13.7時間です。時間的には10000時間の法則に則っているのですが、問題は、良い指導者から、自分で良く考えながらの“deliberate practice”が10000時間でなければならないのです。