2014/02/26

「勝つこと」と、「負けないこと」

  「勝つこと」と「負けないこと」とは、一見似ていますが、物事に向き合う姿勢や態度は大きく違います。
   私の専門とする医療は、周産期医療といって、妊婦、胎児、乳幼児を対象に、妊娠、分娩、分娩後の母親と子供を安全に管理していく医療です。他の医療との大きな違いは、死産や母体危機などの異常がでてくる危険性をはらみながら、比較的健康で正常な経過をとる方を患者さんとしていることです。したがって、異常が起こる可能性を予見し、起こった異常を早期に発見、そして、より良い方向に母児を導くことが主眼となり、また一旦起こった異常に時間をおかずに対処する訓練が必要となります。私は、この周産期医療を30年間行っています。この経験から、抽象的な言い方ですが、新たな治療策に打って出るなどの「勝つこと」よりも、現状を耐えて「負けないこと」の方が、上手く行くことが多いように感じています。
  特に、20年以上新生児集中治療室(NICU)に勤めてきましたが、「この小さな赤ちゃんを明日まで生かすには何をしたらいいか?」すなわち「どうしたら負けないですむか」を常に考えてきました。