2016/02/10

地域医療構想と周産期医療

 「医療費2025年問題」とは、昭和22年~24年生まれのベビーブーマーが、後期高齢者である75歳になる2025年から国民医療費が現在の2倍近くなるという問題です。高齢者ほど、病院にかかる頻度が多く医療費が多くなる傾向にあるため、本格的高齢者社会となる2025年からは、現在の国民皆保険制度では、財政がパンクする危険があるのです。この解決策の一つとして、地域の病床数を減らすこと、さらに病床を超急性期、急性期、回復期、慢性期に病棟別に区分けするという策です。すでに、各医療圏で「地域医療構想調整会議」は始まっており、例えば津地域では、2014年報告で3,515床あるところを、2025年には訳700床程度減少させ、急性期以上の2,140床を1000床ほど減少させ、多くを回復期や慢性期ベッドに変更するといった具合です。

 また、この地域医療構想を踏まえて、20184月からの診療報酬・介護報酬同時改定と、第7次医療計画の開始がなされるわけです。さらに、その前に行われる2016年の診療報酬改定の動向にも反映されてくると考えられています。例えば、地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化・連携に関する点数が高くなり、また患者重症度・看護必要度が見直しされ、機能係数に加算される、などです。

 難しい話かもしれませんが、わが国の医療形態を一変させる事柄ですので、われわれ母性衛生にかかわるものも熟知し、対策を考える必要があります。

 残念なことに、この地域医療構想において、分娩施設や新生児治療施設などの周産期医療施設のベッドが超急性期か急性期なのか、明確に規定されていません。未曽有の少子化である我が国で、置き忘れられている重要課題です。医療機能を評価は、現在、診療単価でなされており、超急性期ベッドは3000点以上、急性期は600点以上、回復期は225点以上としているのが一般的な指標です。したがって、正常分娩費用は40万円前後ですので、分娩施設ベッドは、急性期以上として良いと思われます。三重県全体の分娩数が15000人を割っており、地域格差が大きくなってきた今日、分娩施設におけるベッド数について再考する時がきていると思います。また、そこで働く、医師、助産師、看護師の配置の問題も長期的展望にたった解決法を考えなければなりません。私的な意見として、所属場所と勤務場所の同一化は限界にきており、助産師出向制度や医師派遣制度の充実が必要と考えております。三重県において、安全・安心に産み育てる環境を作る上で、われわれ三重県母性衛生学会が果たす役割は大きいと思います。