2016/02/16

妊娠・分娩のハイリスク、ローリスク


 正常妊娠・分娩は、分娩が終わった後に経過が正常で、元気な赤ちゃんとお母さんが退院されたときに呼ばれるものです。正常妊娠と思っていても、その20%前後が異常経過を取るといわれています。したがって、異常となる可能性の低い例をローリスク妊娠、可能性が高い例をハイリスク妊娠と呼ぶようにしています。「ローリスク妊娠・分娩は助産師が、ハイリスクは産科医が担当する」という文言を良く見ますが、本当にそうでしょうか。この考えは、Aのモデルがイメージ図ですが、私はBのモデルでなければいけないと思います。ハイリスクに対しても、助産師としての役割はあります。例えば、分娩時の子宮内蘇生、新生児蘇生、死産後のグリーフケアなど、助産師として習得しておかなければならないことがたくさんあります。また「周産期センターは高度、ハイリスク医療、一方、一次施設はローリスクな医療」ということも良く見かけます。しかし、勤務しているスタッフの専門知識と技能に関して考えると、本当にいいのでしょうか?役割分担しすぎた体制では、そこに勤務するスタッフは、自然と狭い見識になってしまいがちではないでしょうか?そのため、日本看護協会は、「助産師出向支援モデル事業」を平成23年度から立ち上げ、一次施設と高次施設の助産師の人事交流をはかっています。まだ、その効果は目に見えていませんが、AのモデルからBのモデルのイメージへの発想の転換ができるのではと、期待しています。三重大学病院でも母性棟の助産師が、三重県下の一次施設の助産師と交換留学的な交流を平成27年から開始することになりました。1か月前後という比較的短期間ですが、大学病院の助産師にはより多くの自然分娩が取り上げられるという、キャリア上のメリットがあり、また、一次施設では、ハイリスク妊娠が最終的な段階まで経験できるようになります。それ以上の大きな副産物も期待しています。本年の母性衛生学会では、その結果を報告できるものと思います。